今年は陽気な春を通り越して、冬から一気に夏が来たような気候でしたね。こんな時に気になるのが、寒暖差です。寒暖差には「昨日は暑かったけど今日は寒いから服装に困る」といったものもありますが、今回のテーマは夜間、眠っている間に発生する寒暖差です。
夜に寒暖差なんてあるの?と思われる方も多いかと思いますが、風邪をはじめとする体調不良の原因となる「寝冷え」は、主にこの夜間の寒暖差が原因です。寝冷えを予防するために夜間の寒暖差とどう付き合っていけばいいのかをお伝えしていこうと思います。
◎夏にも寝冷え対策って必要なの?
寝ている間に体が冷やされて体調不良などを引き起こす寝冷え。「体が冷える」というニュアンスから冬に起きるものだと思いがちですが、その大半は夏に起こっています。
酔っぱらって植え込みやソファで寝てしまった、などの場合はもちろん別ですが、そうでないならほとんどの人は、冬はきちんと布団をかぶって眠るはず。そうであれば、よほど薄い布団をかけていたり隙間風が吹き込んだりするような状況でもない限りは、寝冷えの心配はありません。
では夏の場合はどうでしょうか。皆さんが大体ベッドに入る23~24時ごろ。梅雨でも気温が20℃前後、梅雨が明けて夏が到来すれば25℃を超えているのも、今や普通ですよね。
そんな気温ですから、もちろん長袖長ズボンなどでは暑いですし、ましてや布団などかけたらとてもじゃないけど暑苦しくて眠れません。結果的に薄着、極端な人だと全裸で寝てしまう人も最近は多いのだとか。
しかし、この入眠時の気温はずっと続くわけではありません。一日で最も気温の低くなる午前4時には、そこからおおよそ2~4℃ほどの気温の低下がみられます。
寝る時に暑いからと薄着で、しかも窓を開けたままにしておくと、冷やされた空気が風となって部屋に吹き込んでくるわけですから、その体感温度はさらにそこから下がります。こうなると、体が過度に冷やされることになり、結果寝冷えが発生してしまうのです。
たかが気温が5℃変わるくらいで大げさな、と思われるかもしれませんが、睡眠時の身体の状態を日中の活動時と同じように考えてはいけません。
睡眠時は体の代謝を下げてより効率的に疲労回復をするために、体の内部、深部体温を1~1.5℃程度下げることが知られています。この働きによってただでさえ低い深部体温が、さらに外気によって冷やされるのです。
また深部体温の低下に伴い内臓の体温調節機能や自律神経の働きも低下しています。このため、必要以上に体温が下がると免疫力の低下や機能異常などがおこり、結果的に風邪をひきやすくなったり、下痢を引き起こしたりするのです。
なら寝冷えをしないためには暑い中でも我慢して寝るしかないの?そんな声が聞こえてきそうですが、もちろんそんなことはありません。というよりもむしろ夏でも暖かい格好で寝るのは、逆効果です。
人間は寝ている間にコップ1杯分の汗をかくと言われていますが、夏にはその汗の量は倍以上になります。もちろん暖かい格好で寝れば、汗の量はさらに増えます。
そんな大量の水分を体に纏わせていると、気化熱によって体表温度はグングン低下していきます。結局、夏らしい格好で寝るよりも寝冷えを誘発しやすい環境になってしまうのです。
また、冷房や窓をあけたまま寝るのは体に悪いからと部屋を閉め切って汗をかきながら我慢して寝ている人もたまにいますが、これは絶対NG。睡眠中は水分摂取が出来ませんよね。しかし汗は出続けるので体内の水分量が減っていき、気づかないうちに熱中症になり、命すら脅かされかねません。
冷やしすぎてもダメ、暑くてもダメ、となると八方ふさがりの感じもありますが、では次に寝苦しい夜でも健康的に睡眠のとれる方法をお伝えしましょう。
◎窓とクーラーどっちがいいの?
寝冷えが怖いからと言って部屋の中を冷やす対策を取らないまま寝るのが絶対NGなのは、先ほど述べました。
部屋の中を冷やす方法としては、窓を開けるか冷房をつけるかが考えられます。しかし、両者ともに「健康に悪い」といううわさがあるのも事実。この真偽から確かめていきましょう。
まずは「窓を開けっぱなしで寝るのは健康に悪い」という噂。これは正しいです。
先ほども述べたように、入眠時と明け方とでは体感温度にかなりの差が出来てしまいます。執事がいるから寝ている間でも窓の開閉ができる、ということのない限り、この温度差はダイレクトに体に伝わってきます。
さらに風が出れば体感温度はさらに下がることに。そのため体が冷えすぎてしまい、寝冷えや不眠の原因となります。
では「冷房をつけっぱなしで寝るのは健康に悪い」という噂はどうでしょうか。これは半分正解で、半分不正解です。
もちろん1晩中つけっぱなしだとか冷風を直接体に当てている、という場合には、体温が必要以上に下がってしまうので不健康です。しかし、タイマー機能をつかって長時間の冷却を避けるようにしたり、あるいは設定温度を27~28℃に設定して一定の温度域をキープするなど、上手に使えば冷房は寝冷え対策にぴったりのアイテムです。
脱水状態になるほど暑くはならないし、寝冷えするほど寒くもならない。こういう設定をしておけば、快適な睡眠が得られることでしょう。
ただ、冷房の機能の中でも除湿モードは、睡眠時には使わないようにしましょう。一応除湿モードでも温度の設定ができるものもありますが、このモードの目的はあくまでも除湿。除湿が完了しなければ運転は止まりません。最終的には設定温度を大幅に下回ってしまうことも。
それに過度の除湿は肌の乾燥や起きたときの喉の違和感を引き起こしますので、日中こまめに管理できる時には大変重宝する機能ですが、夜間には注意が必要です。
ちなみに睡眠にまつわる噂の一つに「扇風機をつけたまま寝ると危険」というものがあります。
汗をかいたそばから扇風機が乾かしていくので、気化熱によって低体温症をおこす、というのがその理由の一つですが、よほど特異な状況でなければ湿度の高いこの日本で死に至ることはありません。
とはいえ、やはり体温低下による寝冷えの心配はやはりありますし、同じところに風が当たり続けることによる風圧へのストレスから、その箇所にしびれや違和感などが出てくる場合もあります。
またこのように明確な症状は出なくても、朝起きたときにだるさを感じる程度のことはよく起こりますので、注意しましょう。
ただし、冷房の風がどうしても苦手、という場合には、扇風機は部屋を冷やす大切な手段の1つです。
扇風機を利用する際には、タイマーをセットする、風は天井や壁などに向けて部屋全体の空気を対流させるようなイメージで直接体には当てない、などの工夫をしましょう。
◎終わりに
睡眠の役割は、その日1日の疲労を回復するためのものです。逆に言えば質の良い睡眠をとれなければ、その疲労は翌日以降に積み重なっていきます。特に夏は日中温度も高く、夏バテという言葉があることからわかるように非常に疲れやすい季節です。冷房の使用をはじめ、今回お伝えした質の良い睡眠をとるためにやるべきこととやってはいけないことを理解して、快適な睡眠環境を作っていきましょう。